d
1.太陽系内の惑星など、地球から近い天体の場合


レーダー・レーザー法

 月、太陽系の惑星などの場合は、レーザー光を天体に当て、反射するレーザーの往復の時間を計ることで、正確に距離を測定することができます。火星までの距離なら、誤差は数メートルのようです。
 近くの山のやまびこは早く聞こえるが、遠くの山は、時間がかかるのと同じです。


2.太陽系に近い恒星の場合


年周視差法(三角視差法)

 レーザー法を恒星には適用できません。なぜなら、星にレーザーを照射しても、レーザーは帰ってこないか、仮に帰ってきても、数年以上もかかるために、測定には、現実的ではありません。
 そこで、太陽系に近い恒星の測定には、年周視差法が用いられます。これは、測量などに用いられている三角法のようなものです。太陽を中心にして、地球が公転すると、目標とする天体の見かけ上の位置がズレることを利用しているもので、下図のように、三角測量の方法により測定することができます。
 すなわち、地球がAの時、目標とする星は、天球上のaの位置に見えます。次に地球がBの位置の時には、星はbの位置に見えます。一方、十分遠方の星(ほとんどの恒星)は、地球の公転によるズレがないために、この遠方の星とのズレの角度を測定します。この角度をPとすると、天体の距離(D)は、D=R/tanP となります。ここで、Rは公転半径(軌道長半径)で正確に分かっているので、Pの角度を測ることにより、天体の距離が求められることになります。


 ちなみに、Pの角度が1秒と仮定した時の天体の距離が、1パーセクであり、天文の学術的な分野の単位として使われています。また、1パーセクは3.26光年になります。なお、光年の単位が学術の分野で使用されないのは、1年の長さは、うるう年があったり、必ずしも一定なものでないために、学術的な分野で使用するのには、色々不都合があるからです。
 この、1パーセクの距離は、銀河系の恒星間の平均的な距離のようです。現在では、より正確に年周視差を測定するために、地上で観測するより、大気の影響を受けない宇宙空間で測定する必要のために、ヒッバルコス衛星が打ち上げられています。
 原理的には、近くの物を、片目ごとに見ると、位置がズレることを利用しています。

 なお、電波を発する天体のメーザー源については、VERA計画による年周視差法で、精度よく距離が測定でき、銀河の立体的なマップが作成されています。


3.太陽系に近い散開星団の場合


視線速度法

 プレアデス星団など散開星団の各々の星は、同時期に生まれ、一塊で、集団として、平行運動しているために、見かけ上、天球上のある一点に収束することになります。2本のレールが遠くで一点に集まることや、流星群が同一の放射点をもつのと同様の理由です。
 このことを利用して、散開星団の距離の測定には、収束点の位置と星の固有運動の視線速度から、下図に示すVt(星の視線方向と垂直方向の速度)を求め、さらに、固有運動による天球上の位置のズレ(図のμ)を観測することで、距離Dを求めます。
 具体的には、下記のとおりです。



 
星団の中心と収束点の角度(図のθ)は、太陽から見た星団の星の方向と運動方向がなす角度と同じです。星団の星の固有運動(V)は、視線方向(Vr)と垂直方向(Vt)に分けることができます。星が一定期間(例えば1年間)にS1からS2に移動した場合、tanθ=Vt/Vr になります。
 ここで、Vt=D(天体までの距離)×μ(天球上の移動角度)となるので、
D=tanθ×Vr/μと表すことができます。
単位として、Vrをkm/s、μを秒/年、距離をパーセクとすると、
D(天体の距離)=Vr・tanθ/4.74μ となります。
 右辺のVr(視線方向の速度)は、スペクトル線のズレを測定すれば、ドップラー効果から分かります。
このように、tanθ(星団の収束点の位置)、Vr(星の視線速度)、μ(天球上の移動角度)を調べることで、距離を求めることが出来ます。
 この方法では、天球上の移動角度観測精度の限界から、200パーセク程度以内の星団の距離の測定に用いられます。
 近くに見える飛行機は、すぐに視界から消えるが、遠い飛行機は、なかなか視界から消えず、また、同じ距離にあったら、速度の速いものほど早く視界から消え、速度の遅い場合は、視界から消えないことのようです。


4.遠方の恒星の場合


分光視差法

 上記2の直接的な方法で測定できるのは、比較的太陽に近い恒星に限られており、さらに遠い恒星の測定では、見かけの明るさから、天体の距離を算出する間接的な方法を用いることになります。すなわち、同じ光度の星では、見かけの明るさが距離二乗に反比例することを利用しています。天体(星)の絶対等級が分かれば、距離は、実視等級から、求められるというわけである。

 この関係は、LogD=1+(m−M)/5 です。

 D:距離(パーセク)、 m:実視等級、 M:絶対等級

 このように、絶対等級が分かればれば、距離が算出されます。この絶対等級については、星のスペクトルを調べることになります。
 太陽のように、標準的な主系列星の場合は、天文関係では有名な、
H・R図で示されているように、恒星のスペクトルと絶対等級との間で、密接な関係がありjますので、星のスペクトルが分れば、絶対等級が推定できることになります。また、主系列星以外の恒星でも、特定の元素のスぺクトルを調べれは、絶対等級が推定できます。

 近くの車のヘッドライトは明るく、遠い車のヘッドライトは暗く見えるのと同じです。

5.系外銀河の場合

セファイド型変光星

 
系外銀河の場合、その中の太陽のような主系列星の星では、暗くてスペクトルや光度を測定することは不可能です。観測できる明るさの星を調べる必要があります。マゼラン星雲の中で、太陽の1000倍から10万倍明るく、かつ、周期的に光度が変化している星が多く見つかりました。この星は、セファイド型変光星といわれ、光度が2日から100日程度で周期的に変動しており、かつ周期が長いほど、見かけの明るさが明るいことが発見されました。これらの変光星は、マゼラン星雲内で、地球からの距離が同じであるので、この考え方より、セファイド型変光星の周期を測定すれば星の絶対的な光度(等級)が分ることになります。つまり、銀河系内で距離の分っているセファイド型変光星について、周期と絶対等級の関係を求めておけば、未知の銀河の距離の測定に当てはめることができます。

 具体的には、目的とする銀河内のセファイド型変光星の周期(t)を測定し、次式により絶対等級(M)を求めます。
  M=-1.371-2.986 Log t

 次に、観測による実視等級(m)を測定し、次式から、距離(D:パーセク)が求められます。
  LogD=0.2(m−M)+1

 この方法で多くの銀河の距離が測定されましたが、後に間違いが分って、このセファイド型変光星には、種族TとUがあり、上記の式は、種族Tに対してのみ成り立つ式です。 
種族Uの式は、 M=0.1+3.0 Log t となります。


6.遠い銀河の場合
 
タリー・フィッシャー法

遠い銀河では、セファイド型変光星を含め、個々の恒星を分解して、観測できないので、銀河そのものの光度が指標となります。
 銀河の中で、渦巻き銀河の場合は、デイスク形状になっており、一方は、地球に近づき、他方は、遠ざかっています。したがって、このディスクの回転速度は、銀河が発する電波のドップラー効果を調べることで、容易に測定できます。このディスク(銀河)の回転速度は、銀河の絶対的な明るさと相関関係があることが分りました。速度が早い銀河ほど、明るくなっています。したがって、銀河の速度から絶対的な光度と見かけの光度を測定し、距離の既知の銀河の絶対光度、見かけの光度との係数を用い、銀河の距離が求められます。


超新星を用いる方法

 
銀河の中には、超新星といわれる、ある種の星が最後に爆発した時に見られる現象があります。この超新星は、銀河と変わらないほどの明るさを持っているものがあり、十分に観測できます。この超新星には、T型(太陽の質量の4〜8倍)とU型(太陽の質量の8倍以上)があり、T型は、その極大時の絶対等級は、−19.5程度であることが分っています(チャンドラセカールの限界質量という物理の法則があり、爆発時の質量が限界値に近く、明るさも一定になります)。
絶対等級がわかっていますので、見かけの等級(m)を観測すれば、距離が算出されることになります。距離(D)は、以下の式から算出されます。

   M=m+5−5LogD  ここでM=-19.5


7.非常に遠い銀河の場合

ハッブルの法則

 
非常に遠い銀河の場合には、これまでの方法では対応できず、宇宙の膨張理論を使うことになります。ハッブルは、距離が既知の銀河について、地球からの相対的な移動速度を観測して、遠い銀河ほど、後退速度が大きいことを見つけました。
 この後退速度は、銀河から発する光のスベクトルのドップラー効果により、長波長(赤色側)にズレる割合を調べることからわかります。この割合が、
赤方偏移といわれる値であり、遠方の銀河の距離の指標となっています。

その他

 
以上、天体の距離の測定方法を、書物を参考に紹介しましたが、上記1、2、3は、直接観測によるもので、精度が確立されていますが、4以降の測定方法は、間接的な方法であり、誤差を考慮する必要があります。たとえば、分光視差法で恒星の距離を測定する場合、見かけの明るさから、距離を求めることになりますが、すでに年周視差法により距離が決定されている恒星について、距離と明るさの関係が求められていなければなりません。
 また、セファイド変光星を用いて系外銀河の距離を測定する場合も、銀河内の距離の分かっているセファイド変光星について、周期と絶対光度の関係が求められていなければなりません。このように、距離の分かっている天体を基準として、さらに遠い天体の距離を求めようとする方法で、
距離はしごと言われます。より遠い天体へと、はしごを一段ずつ登ることから、このように言われます。
 しかし、基準となる天体の距離が間違っていれば、それ以降の天体の距離の誤差が増幅されることになります。したがって、天体の距離は、ある程度の誤差がつきものです。また、特に遠い銀河の場合では、相対性理論の範疇に入っており、距離そのものの概念が絶対的なものではなくなっています。したがって、書物によって、銀河の距離が一定でないのも事実です。天体の距離というのは、そのことを考慮する必要があるようです。

参考文献
天体物理学の基礎        桜井邦朋
宇宙の基礎教室         長澤  工
教養のための天文学講座   米山 忠興
なっとくする宇宙論        二間瀬敏史
はじめての天文学        半田利弘


追記
 
 
撮影した銀河の距離を調べていくと、メシエ番号の付いていない暗い銀河などの場合は、不明な場合が多いようです。国立天文台に聞いても、個々の銀河の距離を決定するのは、多くの労力を必要とすることから、距離が決定されているのは、限られているとの返事でした。
 距離が不明な時に、光度等級と視直径から、おおよその距離を推測した場合、後で距離が分かった時に、意外と予想距離とそれほどかけ離れていなかったことから、距離と光度等級及び視直径との関係を調べてみました。

A.銀河の距離と光度等級の関係
B.銀河の距離と視直径の関係

 このことから、アマチュアが撮影する銀河の大体の距離は、光度等級で推定できるのではと思ったわけです。 
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天体の距離の測定方法